No.31新着 古典落語と新作落語 「古典」という呼び名は、ホール落語とともに広まった
古典落語は、江戸から明治に原型ができ、戦前までに演出が固まった演目を指すことが多い。ただし境界はあいまいで、作者の分かる圓朝作品も古典に数えられる。新作落語の系譜を、確かめられた範囲でたどる。
本文と出典
あらまし
落語の演目は、大きく古典落語と新作落語に分けて語られる。ただし、この二つの間に引かれる線は思いのほか曖昧である。ウィキペディアの「落語」の項によれば、古典落語とは、江戸期から明治期ごろに原型ができ、太平洋戦争が終わるころまでに演出が確立した演目を指す場合がある。作者が分からないまま多くの演者に受け継がれてきた「スタンダード作品」が中心になる。新作落語は、作者または初演者以外が演じることが少なく、同時代の事象や時事・風刺を扱うものが多い。
主なできごと
・江戸〜明治 三遊亭圓朝が「牡丹燈籠」「真景累ヶ淵」「死神」「鰍沢」などを作る(後に古典として扱われる)
・大正〜昭和戦前 柳家金語楼が兵隊落語を作る。上方では初代桂春團治が旧作に大胆な手を加える
・昭和戦中 三代目三遊亭金馬の「防空演習」が戦後も演じられる
・戦後 三代目三遊亭歌笑の「純情詩集」が戦後の新作の出発点とされる。五代目古今亭今輔は「新作落語の巨匠」と呼ばれる
・1980年 初代三遊亭圓丈が「パニック・イン・落語界」を皮切りに新作を次々と発表する
・1983年 桂三枝(のちの六代目桂文枝)が「ゴルフ夜明け前」で芸術祭大賞を受ける
・2004年 春風亭昇太・柳家喬太郎・三遊亭白鳥らの新作ユニット SWA が結成される(2011年に活動休止)
・2017年 瀧川鯉八・春風亭昇々・立川吉笑らの創作話芸ユニット「ソーゾーシー」が活動を始める
「古典」という言葉の新しさ
意外なことに、「古典落語」という言葉自体は新しい。ウィキペディアは、この呼び名が昭和30〜40年代にホール落語が定着するとともに広まったもので、それ以前には存在しなかった言葉だと述べている。寄席で毎日かかる噺は、あえて「古典」と名乗る必要がなかった。新作と並べて区別する必要が出てから、古いほうに名前が付いたことになる。
線引きの難しさ
圓朝の「牡丹燈籠」「真景累ヶ淵」は作者がはっきりしているが、受け継がれてきたために古典として扱われる。田河水泡の「猫と金魚」は昭和の作品でありながら、多くの演者が演じるため古典と見なされることが多い。四代目桂米團治の「代書」は太平洋戦争の開戦直前の作品である。三代目桂米朝の「一文笛」のように、どちらとも言いにくい作品もある。同記事は、古典こそ正統で新作は邪道だという偏見を破った人物として、初代三遊亭圓丈を挙げている。
新作の流れ
新作の系譜は、ウィキペディアの「新作落語」の項によれば、明治の圓朝や初代三遊亭圓遊の古典の再構成から始まり、金語楼の兵隊落語、戦後の歌笑・今輔・春風亭柳昇へとつながる。上方では、永滝五郎や三田純市といった作家が新作を支えた。昭和後期には圓丈と桂三枝が現れ、平成に入ると初代三笑亭夢丸が2001年から2011年まで「夢丸新江戸噺」を主催して新作を公募した。近年は江戸時代を舞台にした「擬古典落語」と呼ばれる作品も生まれ、立川吉笑やナツノカモが代表的な作家として挙がる。
新作の作り手を、もう少し
新作の側には、古典を作り替える流れもある。ウィキペディアによれば、初代三遊亭圓遊は古典の「野ざらし」「船徳」などを新しく再構成し、上方の初代桂春團治は「いかけ屋」「へっつい盗人」などの旧作に大胆な手を加えた。初代桂小春団治は「禁酒」「円タク」などを発表したが、若くして落語界を離れたとされる。三代目三遊亭金馬の「居酒屋」はヒットして代表作の一つになった。五代目春風亭柳昇は「結婚式風景」「日照権」などを作り、四代目柳亭痴楽は「痴楽綴方狂室」を演じた。つまり、新作の作り手には、まったく新しく作る人と、古い噺を今の客に合わせて作り替える人がいる。
なぜ受けたのか
どの時代の新作も、その時代の客が知っている暮らしを題材にして笑いを取る。兵隊落語は戦前の徴兵を、「ゴルフ夜明け前」はゴルフ流行を背景にする。題材が古びれば演じられなくなるのが普通で、長く残るのは作者の手を離れて型が固まったものである。新作の多くが同時代に限られるのは、このためと考えられる。
評価の分かれる点
どこからを古典とするかは、はっきりした定義がない。上記の「戦争が終わるころまで」は一つの目安にすぎない。圓朝作品を創作と見るか古典と見るか、「猫と金魚」のように昭和の作品を古典と呼ぶかは、論者によって扱いが違う。
くらさんの考察
古典とは「いつ作られたか」より「作者の手を離れて皆の噺になったか」で決まる、という見方が一番筋が通ると考えられる。新作が将来の古典になる道筋は、圓朝の例がすでに示している。
ジージへの問いかけ
・ジージが子どものころ、テレビやラジオで聴いた落語は、古典と新作のどちらが多かったでしょうか。
・今輔や柳昇の新作を、当時の寄席やテレビで見た記憶はありますか。
・「古典」という言葉が昭和30〜40年代に広まったと聞いて、思い当たることはありますか。
確かめられなかった点:「古典落語」の語がいつ誰によって使われ始めたかの一次資料、および SWA・ソーゾーシーの現在の活動状況は確認できなかった。
出典
・ウィキペディア「落語」 https://ja.wikipedia.org/wiki/落語
・ウィキペディア「新作落語」 https://ja.wikipedia.org/wiki/新作落語
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが落語QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。